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夏の読書感想『日本戦時企業論序説』 ほぼほぼ日記(162)

Posted on 2025年8月15日

(紹介する書籍)『日本戦時企業論序説』長島修 著 日本経済評論社 2000年

令和7年は戦後80年となる年です。

戦後日本経済のシステムの源流は戦時経済に求めることができるといわれ、そしていま戦後日本経済のシステム自体が変化しているともいえます。いっぽう、現下の取り巻く世界状況を思ったとき、もし日本がまた有事になれば経済システムはどのようになるだろうか、私たちは耐えられるのだろうかと思うことがあります。80年前のあの時、日本がどんな社会であったのかを理解しておくことは、こんな漠然とした不安に対処する一助になるのではと考えました。

この著書は、戦時下から終戦直後まで(概ね1940年代)に日本鋼管を事例にどのような経営が行われたかを比較制度の視点で分析されています。ここでは、とくに労務管理(たとえば、労働移動)について取り上げてみたいと思います。

まず戦時下では若い男性の大量応召により労働力不足が、特に熟練工員において深刻となりました。そこで、大量の不熟練工員で(さらに女性は職員として雇用され)補完することになるのですが、その定着を図るため労務調整令(1942年)が発せられ労働移動が厳しく制限されます。しかし、これで上手く行ったわけではなく、在籍労働者数は維持できたが欠勤率が高く稼働率はむしろ低くなったようです。そこで労働インセンティブを高めるための賃金統制が図られ定期昇給がある生活給、諸手当、それに職種給を加味する賃金が生み出されました。さらに国(産業報国会)が行う配給以外にも各種の福利厚生(衣食住の配給)が実施されました。それでも鉄鋼生産が戦前水準まで戻ることはありませんでした。

そして、終戦を迎えるわけですが、このような戦時下の労務管理(定期昇給等の仕組み)は否定されたかというと、実はそうなりませんでした。戦後も戦時下と同様に混乱し生活が困窮した中で、今度はGHQ指導の下で法認された労働組合が主体となって、戦時下の労務管理はむしろ継続されていくことになったということです(戦時下の事情による工職身分差別の解消、賃金の平等化等が労働組合の要求に馴染んだからで、この戦時下の労務管理は戦後の高度経済成長期においてこそ威力を発揮したのではないかとさえ思えます)。

さて、ここからは私見ですが、もしいま有事になったとき日本は工業生産を維持できるだろうか、労働者が静かな退職だの配属ガチャなどと言っていたら戦い抜くことなどできぬではないか、と思ってしまいます。しかし、当然ですがあの当時もかなりの困難と混乱があったわけです。理解されることは、戦時であれ平時であれ国家は完全な計画、精緻な統制はできないことでしょう(直近ではコロナ禍のことが思い出されます)。

「もしいま有事になったら」について正解はもちろん持ちませんが、どのような時代でも国家が示す社会制度の大枠の下で、企業と労働者(労働組合)が自ら対処せざるを得ないと考えます。少なくとも国家や権威に頼るのではなく、たとえ泥臭くても労使(私たち自身)が互いに知恵を出し合いながら互いの生存を図ることを企業理念にして体制を作り上げておくことが大切だと思うのです。

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