内閣官房が第4回三位一体労働市場改革分科会(2023.12.18)で国内企業3社の人事制度をジョブ型人事制度のモデル事例として紹介しました。ところが、そのうちの1社(O社)がこれに絡んで労働者から訴訟を起こされています。この訴訟は未だ結論は出ていないようですが、いくつかの法務系ネット記事で取り上げられています*1*2。
さらに、「ジョブ型」という用語を生み出した研究者が自身のブログで、この事件についてコメントされていて、いわく「会社側が、この労働者の意に反して勝手に配転できる完璧にメンバーシップ型の制度を「ジョブ型」と勝手に呼んでいるからと言って、この事件を「オリンパスジョブ型事件」なんて呼んでほしくない」と*3。
我が国の場合、労使ともにメンバーシップ型がしみ込んでいます。「ジョブ型」という言葉を安易に用い、それを御旗にした「降格ありき/減給ありき」の人事制度改革は痛い目に会うということでしょう。少なくとも、メンバーシップ型人事制度が生み出されてきた歴史的経緯を良く学んで、その功罪を理解しておけばジョブ型人事制度への接し方も変わるのではないでしょうか。
*1 「ジョブ型人事を口実にした人事権の濫用」 降格処分や配置転換は不当として、オリンパスと子会社を社員が提訴 弁護士JPニュース 2025年03月03日 18:20
*2 「後付け」の理由で降格し給料が大幅ダウン、2度の自殺未遂も… 「ジョブ型人事」に基づく処分は不当として、オリンパス株式会社を社員が提訴 弁護士JPニュース 2025年06月20日 09:07
*3 これを「オリンパスジョブ型事件」なんて呼ばないで hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳) 2025年6月21日 (土)