先日あるネットニュースで日本学生支援機構の「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度」が広がっていることが紹介されていました*1。若手の採用・定着に悩む企業にとって、これは効果的な方策であると考えます。
学位を得ることの価値が増しているように思います。従来は、企業による人材育成が重視されてきました。ただ、どの時代でも大学等の高等教育機関から企業へ与える影響力は大きいのはもちろんですが、現場感覚としては、学校を卒業しても就職すれば全く白紙の状態から教え込む感覚がありました。私のことで恥ずかしながら、大学を卒業し就職した会社で、まだ職場では手書きの社内文書が多い時代でしたので、上司から”きれいなひらがなの書き方”から習ったのを今でも覚えています。実務的な知識・技術の多くは就職した後に得たと言えます。
しかしながら現代は、実務的な知識・技術も日進月歩であり、大学院・大学・高専などの高等教育機関による先進的な研究成果はもちろん、たとえば情報技術など学生時代に獲得した知識・技術が一層重視されていますし、産業界からの期待も高まっていると思います。企業(とりわけ中小企業)がこれらの知識・技術を積極的に獲得しないと時流に乗り遅れてしまうと思えば、高等教育を受けた高い学位を有する人材を獲得しようとする動きが強まるはずです(また、そうなるべきだと思います)。
そう考えると、奨学金の代理返還という福利厚生制度は効果的で、税制優遇も受けられることもあって採用企業が増えるのは理に適っているのではないでしょうか。
*1 「企業の“奨学金代理返還”全国で10倍に拡大…新卒社員「決め手の一つになった」 “全社員”対象の企業も」 2025/6/24 西日本新聞me