２０２５年版の中小企業白書が公表されました*1。現時点、世の中ではトランプ関税が話題にあがるところですが白書の編纂時期とは重なっていなかったのでしょう、それには特に触れられていません。
さて今年の白書は、円安・物価高や「金利がある世界」が到来したことによる生産・投資コスト増と構造的な人手不足を中小企業が乗り越えるために、経営者の「経営力」を重視した内容です。まずは、第１部である昨年度の中小企業の動向（現状分析）について、私なりに気になったところをまとめてみました。
まず人手不足でした。これは言うまでもないところです。中小企業は大企業との間で人材獲得競争にさらされているわけですが、月々の賃金だけを見ても１～２割ほど低めの水準であって、さらに賃上げ余力は小さく労働分配率が７０～８０％（大企業は５０％弱）。利益向上を図るため、コストカット戦略では限界がありますので設備投資（特にデジタル化）により業務効率化を図りたいところ。さらに、物価高・人件費増を価格転嫁したいわけですが、それは改善傾向にあるものの特に中小製造業で難しさがあることが示されていました。
次に倒産や休廃業などの状況についてこの数年は増加傾向にあることが示されていました。その要因については、やはり人手不足あるいは物価高によるものが増加しているとか。一方で、後継者不足については解消傾向にあるそうです。
このような現状の中で中小企業が取り組むべきことが示されていくわけですが、白書には具体的な企業事例が盛り込まれ参考になります。取り上げられた事例のキーワードを列挙すると、取り組むべきテーマが見えてきます（次のとおり）。こういったテーマから気になることがひとつでもあれば、白書を参考に早速取り組みたいものです。
＜事例で挙がったキーワード＞
ＡＩの活用
自動化
ＤＸ・他社と連携したＤＸ
価格決定力・適正な価格設定
利益体質強化（省力化投資・価格転嫁）
サプライチェーン事業承継（異業種参入）
ＧＸ
サーキュラーエコノミー
経済安全保障
ＳＤＧｓ
ＢＣＰ