昨年の今頃、財務省が発表した国民負担率をめぐって「五公五民」という言葉が飛び交いました*1。単に給料の半分取られちゃうという話でなく、企業が負担する福利厚生費も問題です。
そもそも国民負担率が50%に近づく予想はかなり昔から認識されていました。既に1980年代の臨時行政調査会(臨調)において「高齢化のピーク時においても、国民負担率を50%以下にする」という考え方が示されていました。つまり、ずっと以前から「五公五民」を前提に企業の福利厚生のあり方が議論され、いまも続いるわけです。
法定福利については、行政が社会保障制度の効率的な運営を行うこと、また個人が健康で過ごし老後の財産形成の自助努力を積み重ねることにより社会保障費を抑制すれば企業負担も抑制されるわけです。だから、企業としても、たとえばマイナンバーや電子申請だの企業年金改革だの様々な政策実行に関わってきたといえます。
法定外福利については、企業業績を踏まえて増大する福利厚生費を合理化するため、総花的でなく重点を絞り、福利厚生の思い切った統廃合がされてきたと思います。たとえば福利厚生サービスの外注化やカフェテリアプラン等の導入が行われた企業も多かったはずです。
現に企業が負担する福利厚生費はここ数年(2016年~2020年)横ばい。付加価値額に対しておよそ8~9%、給与総額に対しておよそ18%で推移しています*2。法定福利費が増えているわけですから法定外福利費を合理化して横ばいを維持していることが推測されます。
福利厚生のあり方も取り巻く経営環境が影響しているわけです。現代では少子高齢化や人材不足が福利厚生のあり方に影響を与えている面があります。企業が提供する福利厚生(法定外福利)のメニューは、これまで健康や余暇、住宅といったものが中心でしたが、その必要性を見直すとしたらどのようにすべきでしょうか。たとえば、給与総額の3%程度を予算として、健康を定番にしつつ、育児・介護やキャリアといったニーズをとらえ、働き方と関連させていくことがひとつの考え方かもしれません。
福利厚生は地味なテーマではありますが、その目的次第では人手不足対策ひいては業績向上につながると考えます。
*1 「「若者の稼ぎ、半分取られちゃう」との物騒な声も飛び交う…「国民負担率」ってなに?」 読売新聞オンライン 2023/03/23 15:00 配信