古い教科書が眩しい

賃金をいかに合理的に決めるかは多くの経営者にとって課題であるし、また賃金は従業員にとって最大の関心事といえます。

ちょっときっかけは忘れましたが興味を惹く記事か何かがあって、その中で紹介されていたある研究者の名前を、この数年のあいだ気になっていました。

ウェブを気ままに検索した限りでは、その研究者は1917年生まれの精神科医で、公正な賃金について研究を行ったことで有名であり、イギリスのタビストック人間関係研究所を設立したメンバーのひとりだとあります。

この研究者が残した古い書籍(訳・北野利信)が近所の図書館にあることはわかったのですが、「かなり難しそう」と思って、多忙を理由に手にするのを避けていました。
でも、その図書館にはこの研究者について詳しい最近の本(2013年刊行)があることを知り「これなら少しは理解できそう」と思って、ようやく図書館に足が向きました。
その最近の本は500ページを超える大著で、超絶な内容でした(少しは理解できそうなどと思い上がった自分が恥ずかしい)。

振り返れば大学を卒業して以来約30年のあいだ企業人事に携わってきて、今は人前で講釈みたいなことをする立場になったけれど、ふと「自分の理解は正しいのだろうか?」という不安があって、勉強しなおしたいと思っていたところだった自分には最適な本でした。

今回ブックマークした箇所はここ。「われわれ働く者にとって完全な満足とは何であろうか。この問いに対して、ジャックスは、能力に対応した職務に就き、その仕事を通じて能力が向上し、それと共に賃金が向上する機会が与えられている時、われわれは心理的に均衡し、公正感・満足感を抱くというのがジャックスの心理的均衡理論の骨子である」『賃金・人事処遇制度の史的展開と公正性』幸田浩文(2013)

ただ、もっと驚いたのが注釈に掲げられていた参考文献でした。
「『経営学説入門』?なんだか覚えが」
バブル経済も華やかな学生の時分に、たぶん教科書として買った(買わされた?)本で、北野利信の編著であります。
「入門」というタイトルに相応しく私にもわかりやすく経営学説のポケット辞書のような存在で、読書嫌いの自分には珍しく手垢がつくまで読んだ本、だったはずなのに。

改めて書棚から出して、ホコリを払って、パラパラとめくると・・・。ありました。
「エリオット・ジャックス」を解説した章が。テイラーやファヨールを解説した次に。まったく忘れていた。

30年かけて辿り着いた先が30年前に買った教科書にあるとは。

書斎から見える初秋の雲が、眩しいような懐かしいような。